多電子原子の性質を考えるにあたって、とっても重要なものである遮蔽と貫入について書いていきます。
タイトルにも書きましたが、遮蔽と貫入は絶対セットで理解すべきです!!!
遮蔽について解説
遮蔽とは?
遮蔽とは、ある電子が、他の電子からの反発(外向き)を受けることにより、原子核から受ける力(内向き)が減少しているように見える効果です。
他の言葉で言うと、他の電子により有効殻電荷が真の核電荷より小さくなることを遮蔽と言います。
ちなみにスレーター則からもわかる通り、同じ電子軌道に入っている電子からも遮蔽効果は受けるので注意が必要です!
遮蔽によるいろいろな影響
有効核電荷が小さくなる
そもそも有効殻電荷が小さくなることを遮蔽と言っていたので当然ですよね。
次行きます。
外側の電子がエネルギー的に不安定になる
外側の電子はより遮蔽されるため原子核から受ける引力が小さくなります。
すると、引っ張られる力が弱くなるので他の電子との相互作用の影響を受けやすくなり、エネルギー的に不安定になってしまいます。つまり、ポテンシャルエネルギーが大きくなるってことです!
「エネルギー的に不安定」=「ポテンシャルエネルギーが大きい」がいまいちピンとこないかもしれません。
説明すると、引力が強いときは、それに逆らうために大きな力がいるのでその状態をキープ出来て安定ですが、引力が弱くなってしまうと簡単に動かせてしまうので不安定になってしまう感じですね。
ちょっと触るだけでガシャーンって崩れてしまうものと、いくら触ってもびくともしないものなら前者の方が不安定で、ポテンシャルエネルギーが大きいように感じませんか?
原子の性質への影響
上で見た通り、遮蔽効果は外の殻になるにつれて大きくなっていきます。特に最外殻電子は時にものすごい遮蔽効果を受けます。
その最たるものが金属元素で、外殻に比べて内殻の電子数が多いのでその分遮蔽効果も大きくなり、最外殻電子は引力が全然働かなくなり、自由にふるまえます。自由電子ですね。
これが電気伝導や金属光沢といった金属的な性質を特徴づけることになります。
あと、ランタノイド収縮も遮蔽によるものだといえますね!
貫入について解説
貫入とは
主量子数の大きい軌道の電子が、主量子数の小さい内側の軌道よりもさらに内側に入ることを貫入といいます。
…貫入の定義はこれだけです。簡単でしょ?
貫入による影響
遮蔽に関わるのは注目する電子の内側にある電子だけですから、貫入が起こると、遮蔽の効果が減るので、有効殻電荷が大きくなります。
実際に2s軌道と2p軌道を例に挙げてみましょう。
図は2s, 2p軌道の半径と動径分布関数の関係を表したグラフです。
2p軌道は核において存在確率がゼロとなるので、2s電子が内側の芯まで貫入する度合いは2p電子よりも大きいといえます。
したがって、2s電子は2p電子ほど遮蔽されなくなります。
ここから、2s電子の方が2p電子よりエネルギーが低く(強く核に引きつけられている)、そのため、2s軌道は2p軌道よりも先に電子が入ることが分かります!!!
ちょっと難しいですが、多電子原子の方位量子数による軌道のエネルギー差は、貫入から来ていたということも分かりましたね!
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