赤外分光測定やラマン分光測定で、いくつバンドが現れるのか知りたい。
この記事では、そんな人のために、「指標表」を使った方法を解説していきます。
もし、「赤外活性の意味」とか「禁制律」について知りたい方はこちらの記事をどうぞ!
活性の有無が直観的に分からないとき
まず、赤外活性とラマン活性は次のような条件で判断できました。
分子の振動により、
電気双極子モーメントが変化するときに観測→赤外活性
分極率が変化するときに観測→ラマン活性
もし、簡単な分子ならこれを考えるだけでいいのですが、形状が複雑になっていくとこうはいきません。
じゃあどうするか。
分子の対称性を用いて判断する方法を使います。
ここが今回一番重要なところです!
実際、振動モードとその振動の対称種において以下の関係が成立します。
赤外活性:その振動の対称種が基底関数x, y, zのいずれかを変換
ラマン活性:その振動の対称種が基底関数x2, xy等の二次関数のいずれかを変換
ただ、これだけでは問題をどう解いたらいいか分かりませんよね…
というわけで、次は指標表を使って実際に見ていく方法を解説していきます!
実際の指標表の見方
指標表はその中にいろいろな情報が詰まっていますが、今回見るべきポイントは一番右の部分です。
また、原子の振動により張られる対称種は
Γvib = 2A1 + A2 + 3B1 + B2
であるとします。
(再掲)
赤外活性:その振動の対称種が基底関数x, y, zのいずれかを変換
ラマン活性:その振動の対称種が基底関数x2, xy等の二次関数のいずれかを変換
まず赤外活性からいきましょう。
今回x, y, zが入っているのは、A1, B1, B2です。
これと、Γvib = 2A1 + A2 + 3B1 + B2 の係数を照らし合わせて、
A1が2、 B1が3、 B2が1になっているため、赤外活性のバンドは2+3+1=6つと予想できます!
同様にラマン活性では、
A1, A2, B1, B2のすべてが入っているため、2+1+3+1=7
よってラマン活性のバンドは7つと予想できますね!
練習問題
最後に練習問題を置いておきます。
問題
三方両錐形化合物PCl5について,以下の問いに答えよ。
赤外分光測定およびラマン分光測定において,それぞれいくつのバンドが表れると予測されるか。
ただし、この振動の対称種Γvibは、Γvib = 2A1’ + 3E’ + 2A2’’ + E’’ である。
下に答えを載せていますが、その前に一度ぜひ考えてみてください!
答え
指標表より,赤外およびラマン活性な既約表現はそれぞれ「 E’, A2’’」と「A1’, E’, E’’」です。
よって、赤外バンドは3E’ + 2A2’’,ラマン活性なバンドは2A1’ + 3E’+E’’となるので、それぞれ5つと6つのバンドが観察されると考えられます。
(答え)赤外活性:5つ、ラマン活性:6つ
お疲れ様でした!
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