有機化学で習う置換反応と脱離反応で、SN1, SN2, E1, E2の4つの種類の反応を習います。
まずはそれぞれどういう機構で反応が起こるのか学んだあと、具体的にある求核材とあるアルカンを使ったときどんな反応が起こるのか(または反応が起こらないか)を自力で見分けられるようになる必要があります。
というわけで、分類表を見ながら試薬とアルカンの組み合わせと反応の種類を確認していきましょう。
求核性・塩基性での分類
分類表
まずは試薬をグループ分けするところから始まります。
反応に登場しやすい試薬を求核性と塩基性のそれぞれの大きさで分類してみました。
求核性高 | 求核性低 | |
塩基性高 | \(\ce{OH- , OCH3- , NH2 , CH2CH3}\) (Cグループ) | \(\ce{ (CH3)3CO-K+}\) (Dグループ) |
塩基性低 | \(\ce{I-, N3-, RCOO-, RS-, NC-, PR3, NH3}\) (Bグループ) | \(\ce{H2O, ROH}\) (Aグループ) |
少し大変ですが、求核剤を見たときにどのグループ(A~D)に当てはまるかを分からないといけません!
求核剤の求核性・塩基性の高さを知る方法
まず「塩基性の強さ」を知る方法ですが、「塩基性の強さ」は「水素イオン(プロトン)と結合したさ」なので、共役酸の酸の強さを考えれば良く、
例えば\(\ce{OH-}\)の塩基性の強さを知りたければ、共役酸のH2Oが酸として弱いことを考えて、\(\ce{OH-}\)は塩基性が高いんだなと知ることが出来ます。
次に求核性の強さを知る方法ですが、求核性が強いのは「かさ高くない求核剤全般」です。
立体的に込み具合が多きい試薬の場合だけ、立体障害で炭素原子へ近づきにくくなり、求核性が低下します。
また、H2O, ROHのような元々安定な試薬も求核性は低いです。(反応性が低い)
以上のことができれば、表1は覚えなくても大丈夫です!
上を踏まえてどんな反応が起こるかをまとめた表
求核剤のグループ分け(A~D)が出来たら後は表を読み取るだけです。
A | B | C | D | |
メチル | × | SN2 | SN2 | SN2 |
第一級炭素 枝分かれ無 | × | SN2 | SN2 | E2 |
第一級炭素 枝分かれ有 | × | SN2 | E2 | E2 |
第二級炭素 | (SN1, E1) | SN2 | E2 | E2 |
第三級炭素 | SN1, E1 | SN1, E1 | E2 | E2 |
(グループAの求核剤と第二級炭素は反応するといえるか微妙なライン)
この表も、テストの時などは何も見ないで書けるようになる必要があります。
気合いで覚えてもいいですし、理論からある程度導くこともできます。
最後に僕が表2をどうやって覚えたかを紹介して終わります。
表2の覚え方
今回考えるポイントは3つです。
- 求核性が高いほどSN2反応が起こりやすく、塩基性が高いほどE2反応が起こりやすい。
- SN1, E1反応はカルボカチオンの発生を待たないといけないので反応速度が遅い。逆にSN2,E1は速い。
- 超共役により、カルボカチオンのできやすさは第三級>第二級>第一級(枝分かれ有>無)>メチル
グループA
まずグループAについてみていきます。
これは、求核性・塩基性ともに低い求核剤のグループでした。
なので基本反応しませんが、第二級・第三級のときだけカルボカチオンが発生し、SN1またはE1反応が起こります。
グループB
求核性が高く、塩基性が低いグループです。
求核性が高いので、基本的にはSN2反応が起こります。
しかし、第三級の時だけSN2反応が起こらずSN1またはE2反応が起こります。
これは、第三級にせいでかさ高くなってしまい、立体障害のせいで求核剤が目的の炭素に近寄れなくなるせいです。
グループC
求核性も塩基性も高い、最強のグループです。
この時点でカルボカチオンの発生を待たなければいけない、遅いSN1反応やE1反応が起こることはまずないです。
求核性が高いとSN2、塩基性が高いとE2反応が起こりやすいですが、今回はどっちも起こる可能性がありますよね。
ここで、SN2反応は中心炭素原子、E2反応は中心炭素からはなれた置換基に求核性が攻撃することを考えてください。
中心炭素に攻撃する際、メチルなら楽勝ですが、第二級, 第三級炭素には立体障害のせいで全然攻撃できません。
なので、表のように、第一級炭素の枝分かれの有無が、SN2反応とE2反応の境目になっています。
ちなみに、表2に第一級炭素の枝分かれの有無が登場するのはこれのためです。
グループD
塩基性だけが高いグループです。
「全部E2反応かな?」って最初思ってしまいがちですが、メチルだけはE2反応しません。
理由は、反応機構を考えればわかるのですが、メチルは脱離できる置換基がないのでE2反応できないためです。
なのでメチルのときだけSN2反応をします。
これで今回のテーマ、置換反応と脱離反応の競合の解説は終わりです。
最後まで読んでくださった方、本当にありがとうございました!
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