この記事では、高分子の重合が進まなくなる温度である、天井温度を解説していきます。
天井温度の概要
高分子を重合させるとき、単分子が重合してポリマーを生成する反応と同時に、ポリマーがほどけて単分子に戻る向きの反応も存在します。(その反応を解重合といいます。)
天井温度とは、重合反応と解重合反応の速度が等しくなり、ポリマーと単分子が平衡に達する温度です。
数式による説明
天井温度の概要が分かったところで、次に簡単な数式によって理解を深めていきます。
そもそも上の説明で、なぜ温度によって平衡が左右されるのか、という疑問を持った人も多いのではないでしょうか。
その理由は以下の式で説明できます。
\( \large{\Delta G = \Delta H – T \Delta S}\)
ギブス自由エネルギーの式ですね。
\(\Delta G < 0\)で反応が進むためには、\(\Delta H – T \Delta S < 0\)、つまり、\(\Delta H < T \Delta S\)である必要があります。
重合によって熱が生じる⇔反応のエンタルピーは負(\(\Delta H < 0\))であり、
乱雑さをあらわすエントロピーの変化(\(\Delta S\))も負になるので、
温度Tが大きすぎると、\(\Delta H – T \Delta S > 0\)になって、逆にどんどん結合がほどけていってしまいます。
高分子の重合を進めるには、天井温度より低い温度で重合する必要があるわけですね。
天井温度を決める要因
天井温度を決めるものは、主に重合熱の大小です。
自由エネルギーの式から、重合熱が大きいものほど、天井温度は高くなりますよね。
重合熱にかかわる要素として、「歪み」と「かさ高さ」があります。
歪み
歪みをもったモノマーだと、もともとが歪みの分不安定なので、重合熱が大きくなる傾向にあります。
例えば、上のようなモノマーの重合だと、歪みが解放される分、反応エンタルピーが大きくなります。
かさ高さ
かさ高さとは、体積のことだと思っても構いません。
かさ高さが大きいほど重合した後立体的に邪魔なので、その分重合には不利になります。
例えば、ビニル系のモノマーの方が、ビニリデン系のモノマーよりも重合しやすいです!
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