共晶反応と包晶反応の違いについて解説
金属や合金、セラミックスなどの製造過程で重要な「相変態」には、異なる構造を生み出すいくつかの種類が存在します。その中でも「共晶反応」と「包晶反応」は、固体材料が冷却される際に起こる代表的な相変態です。
今回は、共晶反応と包晶反応のメカニズムや違いについて詳しく解説していきます!
文字だけじゃ分かりにくいと思うので、具体的な図も載せてあります!
共晶反応とは?
共晶反応(Eutectic Reaction) は、冷却によって1つの液相が2つの異なる固相に直接変化する反応です。共晶反応は、特定の成分比率(共晶組成)でのみ、共晶温度という特定の温度で発生します。
共晶反応の特徴
- 共晶温度:特定の成分比(共晶組成)で、液相が共晶温度で直接2つの異なる固体相に分かれます。
- 共晶組織:反応が進むと、液相は規則的な層状(ラメラ)や細かい粒子状の構造を形成します。この組織は強度や硬度を向上させるため、多くの合金で利用されます。
- 二相共存:共晶反応の結果、生成される固体は2種類の相が共存する構造を持ちます。このため、耐久性や機械的強度が向上します。
実際の相図での共晶点
実際の相図での共晶点は以下のような点です。
ただし、liq.:液相、A, B:固相 です。
共晶点は、山の谷間のようになっているところですね!
実際、共晶点を通るように温度を下げていくとどう変わるかを見てみると、
液相→A相とB相
のようになっているのが分かります。
これが共晶点の名前の由来ですね。
包晶反応とは?
包晶反応(Peritectic Reaction) は、1つの液相と1つの固相が反応して、異なる1つの新しい固相を生成する反応です。包晶反応は、特定の温度と組成で進行し、共晶反応とは異なり1つの新しい固体が生成されます。
包晶反応の特徴
- 包晶温度:包晶反応は、特定の包晶温度でのみ発生し、その温度で固体と液体が化学反応を起こして新たな固相が生じます。
- 反応の進行:包晶反応は、固相と液相が直接接触する境界で進行するため、冷却速度が速すぎると完全に反応が進まず、均一な組織が得られないことがあります。
- 組織の変化:包晶反応では、1つの液相と1つの固相が反応して1つの新しい固相になるため、共晶反応で見られるような層状構造や二相共存の構造は形成されません。
実際の相図での包晶点(その1)
実際の相図での包晶点は以下のような点です。
ただし、liq.:液相、A, B, F:固相 です。
今回は、固相Aと固相Bの他に、固相Fが登場していますが、固相FはAとBが一定の割合で混じりあっている、いわゆる固溶体ってやつです。
山が下がっている途中で水平線と交わっているような点ですね。
また、この図には共晶点もあってので、併せて載せています。
今回も包晶点の近くで温度を下げるとどう変わるか見てみると、
B相(固相)と液相→F相(固溶体)と液相
のようになっているのが分かります。
もっと詳しく書くと、
B相と液相→F相 (分解溶融)
という変化が起こっています。
実際の相図での包晶点(その2)
もっと他の例も見てみましょう。
先ほどの相図で、2つの物質の割合を変えた所から温度を下げていくとどうなるかを見てみましょう。
図の通り、
B相(固相)と液相→F相(固溶体)とB相(固相)
になっているのが分かると思います。
ここで起こっている変化は、
B相(固相)と液相→F相(固溶体)
であり、もともとあったB相が、一部のB相と液相から新しく出来たF相に「包」まれる形で析出が始まります。
これが包晶点の名前の由来ですね。
共晶反応と包晶反応の違いまとめ
最後に2つの違いをまとめてみました。
特徴 | 共晶反応 | 包晶反応 |
---|---|---|
反応の進行 | 1つの液相が2つの固相に変化 | 1つの液相と1つの固相が反応し、新しい固相を生成 |
組成の構造 | 層状または二相共存の構造が多い | 単相構造が多い |
冷却速度の影響 | 比較的影響が少ない | 冷却速度が速すぎると不完全な変態になる場合がある |
例 | 鉄-炭素系合金のパールライト形成 | 鉄-ニッケル合金の相変態 |
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