気体を乾燥させるためには、その性質に適した乾燥剤を選ぶ必要があります。乾燥剤の選択を間違えると、気体が乾燥剤と反応してしまうため注意が必要です。本記事では、乾燥剤の種類と、それぞれに適した気体の選び方について解説します。
目次
代表的な乾燥剤とその性質
乾燥剤には、大きく分けて酸性・中性・塩基性の3種類があります。それぞれの代表的な例を紹介します。
① 酸性の乾燥剤
酸性の乾燥剤は、アルカリ性の気体と反応してしまうため、それらの気体の乾燥には使用できません。
代表例:
- 濃硫酸(\(\ce{H2SO4}\))
- 吸湿性が非常に強い(特に水との親和性が高い)。
- 酸化力があるため、還元性のある気体(\(\ce{H2S}\) など)とは反応してしまう。
- 適した気体:\(\ce{O2}\)(酸素)、\(\ce{N2}\)(窒素)、\(\ce{CO2}\)(二酸化炭素) など
- 使用不可の気体:\(\ce{NH3}\) → 中和反応を起こす, \(\ce{H2S}\)→濃硫酸に酸化される, \(\ce{C2H4}\)→濃硫酸に付加する
- 十酸化四リン(\(\ce{P4O10}\))
- 強い乾燥作用を持ち、水と激しく反応してリン酸(\(\ce{H3PO4}\))を生じる。
- 適した気体:\(\ce{O2}\)、\(\ce{N2}\)、\(\ce{CO2}\) など
- 使用不可の気体:\(\ce{NH3}\)、塩基性の気体
② 中性の乾燥剤
中性の乾燥剤は、気体の性質を選ばず多くの気体の乾燥に適しているため、汎用性が高いです。
代表例:
- 塩化カルシウム(\(\ce{CaCl2}\))
- 吸湿性が強く、水と反応せずに水分を吸収する。
- 適した気体:\(\ce{H2}\)、\(\ce{O2}\)、\(\ce{N2}\)、\(\ce{CO2}\) など
- 使用不可の気体:\(\ce{NH3}\) → \(\ce{CaCl2}\)と反応して水和物を作る
- シリカゲル(\(\ce{SiO2.nH2O}\))
- 多孔質で水も吸着する。ただし、気体も吸着するので気体の乾燥にはあまり使われない。
- 適した気体:\(\ce{H2}\)、\(\ce{O2}\)、\(\ce{N2}\)、\(\ce{CO2}\) など
- 使用不可の気体:\(\ce{NH3}\) → シリカゲルの\(\ce{OH}\)と水素結合してしまう。
③ 塩基性の乾燥剤
塩基性の乾燥剤は、酸性の気体と反応するため、それらの気体の乾燥には使用不可です。
代表例:
- ソーダ石灰(\(\ce{NaOH + CaO}\))
- 強い塩基性を持つため、酸性の気体を吸収する。
- 適した気体:\(\ce{NH3}\)
- 使用不可の気体:\(\ce{CO2}\)、\(\ce{HCl}\) → それぞれ中和反応を起こす
- 生石灰(\(\ce{CaO}\))
- 水と反応しやすく、乾燥作用が強い。
- 適した気体:\(\ce{NH3}\)、\(\ce{N2}\)
- 使用不可の気体:\(\ce{CO2}\) → \(\ce{CaCO3}\)(炭酸カルシウム)を生成
乾燥剤の使い分けの例
乾燥材 | 液性 | 使えない気体 |
---|---|---|
濃硫酸 | 酸性 | NH3, H2S, C2H4 |
十酸化四リン | NH3 | |
塩化カルシウム | 中性 | NH3 |
シリカゲル | NH3 | |
ソーダ石灰 | 塩基性 | HF, HCl, H2S, Cl2, NO2, SO2, CO2 (酸性気体) |
生石灰 |
まとめ
気体の乾燥には、その性質に合った乾燥剤を選ぶことが重要です。
- 酸性の乾燥剤(濃硫酸など) → 塩基性の気体(\(\ce{NH3}\))とは反応するのでNG。
- 中性の乾燥剤(塩化カルシウムなど) → 多くの気体に使用可能だが、\(\ce{NH3}\) には使えない。
- 塩基性の乾燥剤(ソーダ石灰など) → 酸性の気体(\(\ce{CO2}\) など)とは反応するのでNG。
乾燥剤を適切に選択すれば、気体を純粋な状態で使用でき、実験の精度が向上します!
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