相転移や結晶成長の初期段階では、新しい相(固相や液相など)の核が形成されます。このとき、系の自由エネルギーは体積エネルギーの減少と表面エネルギーの増加の影響を受けます。
これを表すのが、核形成に伴うギブス自由エネルギーの変化(ΔG)であり、核の半径 rに依存する関数です。
1. 自由エネルギーの変化の式
核の自由エネルギー変化 \(\Delta G\) は、以下の2つの項からなります。
- 体積自由エネルギー変化(\(\Delta G_v\))
- 新しい相が形成されることにより得られるエネルギー(エネルギーの減少)。
- 体積に比例し、負の値をとる。
- 表面自由エネルギー変化(γ)
- 界面ができることで発生するエネルギー(エネルギーの増加)。
- 表面積に比例し、正の値をとる。
これを考慮すると、球状の核(半径 r)について、自由エネルギーの変化 \(\Delta G\) は次のようになります。
\(\Large{ΔG(r)=\Delta G (r) = \frac{4}{3} \pi r^3 \Delta G_v + 4\pi r^2 \gamma}\)
ここで、
- \(\Delta G_v\):単位体積あたりの自由エネルギー変化(負の値)
- \(\gamma\):界面張力(正の値)
- \(r\):核の半径
2. 臨界半径 r* と臨界自由エネルギー ΔG∗
核の成長条件を考えると、自由エネルギーが最大になる 臨界半径 \(r^*\) を求めることが重要になります。
臨界半径を超えてしまえば、あとは核が大きくなるにつれて自由エネルギーが減少していくのでどんどん核が成長していくからです。
\(\Large{\frac{d\Delta G}{dr} = 0}\)
を解くと、臨界半径 \(r^*\) は
\(\Large{r^* = -\frac{2\gamma}{\Delta G_v}}\)
となります。この{r^*} より小さい核は消滅し、大きい核は成長するというわけですね。
また、対応する臨界自由エネルギー \(\Delta G^*\) は、
\(\Large{\Delta G^* = \frac{16 \pi \gamma^3}{3 (\Delta G_v)^2}}\)
となります。これは、核が成長するために越えなければならないエネルギー障壁です。
3. 過冷却と核形成
核が形成されるためには、\(\Delta G_v\)(体積自由エネルギー変化)が十分に大きくなる必要があります。
ここで、\(\Delta G_v\) は、温度 T に依存し、特に液体が過冷却状態にあるとき、核形成が進みやすくなります。
\(\Large{Delta G_v = \frac{\Delta H_f (T_m – T)}{T_m}}\)
ここで、
- \(\Delta H_f\):凝固の潜熱(単位体積あたり)
- Tm:融点(平衡凝固温度)
- T:現在の温度
温度 Tが低くなるほど \(|\Delta G_v|\) が大きくなり、臨界半径 \(r^*\) が小さくなるため、核形成が起こりやすくなることが分かりますね。
4. まとめ
- 自由エネルギー変化は、体積自由エネルギーの減少と表面自由エネルギーの増加のバランスで決まる。
- 臨界半径 \(r^*\) を超えると核が成長し、小さいと消滅する。
- 温度が低くなる(過冷却が進む)と核形成が起こりやすくなる。
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