物理化学の反応速度論を学んでいくと、立体因子\(\large{P}\)が顔を出します。
こんにちは!
途中から、反応速度定数を表すアレニウス式の中にもしれっと紛れ込んでいます。
初見では「どっからわいてきたんだよ」ってなるかもしれません。
そんな「立体因子」について解説していきます!
立体因子の概要
頻度因子と立体因子
先ほど立体因子がアレニウス式の中にも紛れ込んでいるという話をしましたが、
アレニウス式 \(\large {k = Ae^{-\frac{Ea}{RT}}}\)
の頻度因子\(A\)の一部が立体因子\(P\)と考えてOKです。
頻度因子と立体因子は混同しやすいので注意!!!
反応速度論から見た「頻度因子」
「なんで頻度因子の話なんだよ」ってなった方もいると思います。
でも、立体因子を理解するために、頻度因子の話がどうしても必要なんです。
・・・ではそもそも、反応速度は何によって決まるでしょうか?
少なくとも \(k = Ae^{-\frac{Ea}{RT}}\) という式から2つは分かりますね。
\(v = k[X]^a[Y]^b\)のように書けるので、
Eaが小さいほどほど、またTが大きいほど反応は早く進みます。
これら2つの要因以外に反応速度を決める要因はないでしょうか?
・・・あります
結論から言うと、それは分子の衝突断面積と相対速度です。
衝突断面積・・・大きいほど分子同士がぶつかりやすい
相対速度・・・速いほどぶつかりやすいし反応しやすい
なので、頻度因子Aはこれら(+α)を使って書き表せます。
立体因子の意味
ようやく立体因子の話です。
実は、頻度因子\(A\)は分子の衝突断面積\(\sigma\)と相対速度\(¥bar{c}\)だけでは表せません。
やっぱりそれ以外にも因子があって、それをまとめたものが立体因子\(P\)です。
以上から、頻度因子Aは、
$$A = P \times \sigma \times \bar{c}$$
というようになります。これで\(P\)がアレニウス式に入る理由が分かりましたね。
今までごちゃごちゃと話してきましたが、結局この式を覚えればそれで大丈夫です。
ただし、Pの意味は覚えておきましょう!
- 物理的な衝突頻度とエネルギー以外の因子による反応の確率を示した数値
- アレニウス式の頻度因子と衝突頻度の差を埋める補正項
です!!!
立体因子と1との大小関係について
最後に、定期試験などによく出る「立体因子と1との大小関係」を扱って終わりたいと思います。
例えばこんな問題が出ます。
立体因子は(1)の時のように普通は1より小さいが、反応によっては(2)のように1より大きくなることがある。
その理由を答えなさい。
反応式 | 立体因子 |
---|---|
\(\ce{H2 + C2H4 -> C2H6}\) …(1) | \(1.7 x 10^{-6}\) |
\(\ce{K + Br2 ->KBr + Br}\) …(2) | \(4.8\) |
分子同士が衝突しても必ず反応するわけではないので、普通は\(P < 1\)なのですが、
\(\ce{K + Br2}\) のように電気陰性度の差が大きいときには、衝突の前に電気陰性度の低い\(\ce{K}\) から高い\(\ce{Br2}に電子が移動することがあります。
すると、静電的な引力によってお互いに引き合い、衝突することがあります。ちなみにこれを「銛機構」と呼びます。
銛機構によって\(P > 1\)となる場合があるのですね!
答案にはこれを書けば大丈夫です。
というわけで今回は終わります!!!
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