絶対立体配置(absolute configuration)という言葉を聞いたことはありますか? 僕は何となく響きが中二病っぽくて好きです(笑)
これは不斉炭素の三次元的な配置を表すものですが、この配置を決めるルールを作ることで、化合物の名前から構造式が書けるようになります。
そんなルールである、Cahn-Ingold-Prelog の順位則を使ったR,S絶対配置について説明していきます!
R, S順位則とは?
概要
まず、キラルな分子(対称面を持たない分子)を考えます。
その分子の不斉炭素原子には異なる4つの置換基がついています。これは分子が対称面を持たないことからも分かりますね。その4つの置換基に順番を付けるのがR, S順位則です。
下の図を見てください。キラルな分子それぞれの置換基にa, b, c, dと優先度順に番号を振ってみました。aが一番優先度が高いつもりです。
これらの図はちょうど向かい合っているように並んでいますね。
ここで、図の下にも少し書きましたが実は左側の図がS配置、右側の図がR配置になっています。
「S配置, R配置ってなんだよ」ってなると思うので、まずそこを解説していきます。そんなに難しくないですよ!
S配置, R配置について解説
先ほどの図をもう一度載せてみます。
置換基dがC(炭素)の真後ろに来るように見れば、a, b, cの並び順がそれぞれ左回り、右回りになるのが分かりますか?
このように、a, b, cが左回りなものをS配置、右回りなものをR配置と言います。
繰り返しますが、一番優先度が低い置換基(今回はd)が炭素の真後ろに来るように見たときの並び順で判断します!
ちなみに右回りのRightとR配置のRを結び付けて覚えると忘れにくくてオススメです!
さっきの様に置換基を並べて、優先度の高い順に読んでいったとき、
- (a, b, cが)左回りになる配置→S配置
- (a, b, cが)右回りになる配置→R配置
キラルな分子では、ある不斉炭素に対して、S配置かR配置かの2通りしかないので、どっちの配置かが分かればキラルな分子の立体構造が分かることになります!
ここまでで言えることは、置換基にa, b, c, dと番号を振ったとき、誰が振っても同じようになるルールさえあれば、読んだだけで立体配置が分かる化合物名が作れるということです。
ということでここからはそのルール(置換基の優先度を決めるもの)を解説していきます!
R, S順位則のルール
全部で3つあります。
ルールその1
不斉炭素に直結した4つの原子の中でより原子番号の大きなものがより高順位
例を挙げると、\(\ce{-CH_3 と-Br であれば、CとBr}\)の原子番号を比べて、\(Br\)の方が高順位となります。
原子番号を考えて、Cは6番、Brは35番だからです。
置換基が\(\ce{-CH_3, -Br, -OH, -Cl}\)であれば、\(\ce{-CH_3, -OH, -Cl, -Br}\)の順になりますね。
ちなみに、同位体はより重い方が高順位です。
ルールその2
置換基の最初の原子で決まらない場合はキラル中心から2番目の原子で比較
それでも決まらなければ、3番目, 4番目, …となります。
\(\ce{-CH3と-CH2CH3}\)なら、後者の方が優先度が高いです。
ルールその3
多重結合は同じ数の単結合と等価と考える
これは少し分かりにくいですよね。
分かりやすく言うと、二重結合なら単結合2つ、三重結合なら単結合3つと同じだと考えるということです。
例えば、\(\ce{#Cと-C(CH3)2H}\)を考えてみます。
ルール3に基づいて考えると、
よって、前者の炭素にはCが3つついていると考えられ、後者の炭素にはCが2つ、Hが1つついていると考えられるので、
優先順位がより高いのは、\(\ce{#C}\)の方になります!!!
18>17なので、\(\ce{#C}\)のほうが優先度が高いことになりますね!
練習問題
次の2つの分子の立体中心に対して、S配置かR配置かを答えよ。
答え
解説
(1つ目)
水素が省略されていることに気が付ければOK。
左上だけ解説しておくと、
直接 Oがついてるのが一番優先度が高くて、Hがついてるのが一番優先度が低い。
あと2つは直接ついてるのがCで、次にOHがついてるとこまでは同じだけれど、右下の方はほかにもまだ付いているものがある。だから、2番と3番(bとc)が決まります。
すでに一番優先度が低いHが紙面後ろになっているので、a→b→cと回る向きをそのまま考えれば良く、その結果R配置だと分かります。
(2つ目)
中心炭素にくっついているのは、\(\ce{①-CH3 ②-C(CH3)3 ③-C#CH ④-C6H5}\)(フェニル基)の4つ。
中心のCに直接付いているものを見ると、全部Cなので2番目以降を見ます。
二番目は①H,H,H ②C,C,C ③C,C,C ④C,C,C
三番目は①なし ②H,H,H ③C,C,H ④C,C,H
四番目は①なし ②なし ③なし ④C,C,H
よって優先順位は④→③→②→①の順なので、S配置になります。
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