突然ですが、シクロプロパンのプロピレンへの異性化は1次反応です。
\(\ce{CH2-CH2-CH2->CH3-CH2=CH2}\)
これはどのようにして説明できると思いますか?
実は、これを説明するのがLindemann-Hinshelwood機構です!
今回はこれの考え方を説明し、実際に導出します!
STEP1 2つのことを仮定する
Lindemann-Hinshelwood機構は二つの仮説を認めることでできています。
- 反応が、「衝突による活性化状態」と「その後の失活状態」の間で平衡状態にある
- 反応が、「衝突による活性化」と「活性化されたA分子(A’で表す)の分解」の二段階で進行する
分かりにくいので式に直すと、
$$\Large {\ce{A + A <=> A’}} ・・・①$$
$$\Large{\ce{A’->B}} ・・・②$$
となるということですね。
STEP2 定常状態近似の利用
①の正反応の反応速度定数をk1,逆反応のをk2, ②の反応速度定数をk3とすると、
中間体A’について定常状態近似が使えるので、
\(\ce{\displaystyle\frac{d[A’]} {dt} = k1[A]^2-k2[A’][A]-k3[A’]=0}\)
\(\ce{-\displaystyle\frac{d[A]} {dt} = k1[A]2-k2[A’][A]}\)
\(\ce{\displaystyle\frac{d[B]} {dt} = k3[A’]}\)
となります。
この3式を連立して解くと、
$$\frac{d[B]} {dt} =\ce{\frac{k1k3[A]^2} {k2[A] + k3}} $$
となりますよね!
STEP3 場合分けで近似
STEP1で$$\frac{d[B]} {dt} =\ce{\frac{k1k3[A]^2} {k2[A] + k3}} $$を求めたので、その分母に注目して近似計算を行っていきます
\(\ce{k3 \gg k2[A]}\)のとき
$$\frac{d[B]} {dt} =\ce{\frac{k1k3[A]^2} {k3} = k1[A]^2} $$
となります。
\(\ce{k3 \ll k2[A]}\)のとき
$$\frac{d[B]} {dt} =\ce{\frac{k1k3[A]^2} {k2[A]} = frac{k1k3[A]} {k2}} $$
となります。
ここであることにお気づきでしょうか?
そう…これは1次反応です!!!
というわけで、\(\ce{k3 \ll k2[A]}\)のとき1次反応になることが分かりました。
どんなときに\(\ce{k3 \ll k2[A]}\)になるかっていうと高圧のときですね。
自分たちがいる環境は十分に高圧だとみなしていいので、Lindemann-Hinshelwood機構が成り立ちました!
ちなみに\(\ce{k3 \gg k2[A]}\)の時は二次反応になりますよ。
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