大学の授業で新たに出てくるのが「エンタルピー」です。熱力学の分野で登場しますね。
ちなみにエントロピーとは似て非なるものなので注意が必要です。
以下がウィキペディアの定義です。
エンタルピー(英: enthalpy)とは、熱力学における示量性状態量のひとつである。熱含量(ねつがんりょう、英: heat content)とも。エンタルピーはエネルギーの次元をもち、物質の発熱・吸熱挙動にかかわる状態量である。
エンタルピー – Wikipedia
難しそうだなと思った方も大丈夫です!!ゼロから丁寧に解説していきます!
エンタルピーの定義
\(\Large{H = U + pV}\)
ここで、H:エンタルピー、U:エネルギー、p:圧力、V:体積 です。
ここで分かるのはエンタルピーがエネルギーの単位ってことですね。というのも「U」と「pV」がエネルギーの単位だから。
これでエンタルピーの定義は分かりました。
でも、今のところ「何のためにエンタルピーというわざわざ新しいものを導入したのか」がわからないので、次はエンタルピーの便利さを説明していきます。
エンタルピーがなぜ便利か
定圧条件下のとき
高校物理で熱力学を習ったとき、こんな式があったのを覚えていますか?
\(\Large{U = pV + Q}\)
ここで、U:内部エネルギー、pV:受け取った仕事、Q:受け取った熱量 です。
ここから、
\(\Large{\Delta U = \Delta(pV) + \Delta Q}\)
が出てきますよね。
余談ですが、これからは仕事も熱も
- 内部(系の中)にエネルギーが入るとき、プラス
- 外部(系の外)にエネルギーが出ていくとき、マイナス
として考えます。
これ結構大事です。
気を取り直して、先ほどの式\(\large{\Delta U = \Delta(pV) + \Delta Q}\)を使ってエンタルピーの便利さを語っていきます。
とその前に、ある条件を付けくわえることが必要です。
それは、「圧力が一定」という条件です。これがないとエンタルピー君は真価を発揮できません。
定圧条件下で、
\begin{array}\Delta H &= \Delta U + \Delta (pV)\\ &=\Delta U + \Delta p \times V + p \times \Delta V \\ &= \Delta U + 0 \times V + p \times \Delta V \\ & = \Delta U + p \times \Delta V \\ &= Q\end{array}
ここから、定圧条件下ではエンタルピー変化がそのまま熱量変化になっているということが分かります!
さらに、普段自分たちが生活しているところがほぼ1気圧で一定なので、特殊な条件下でなければいつでもエンタルピー変化を熱量変化と考えてよいことになります!!!
ちなみに、今回は定圧条件下での熱の出入りを\(Q\)と書きましたが、定圧条件下であることを分かりやすくするために添え字を使って、\(Q_p\)と書くことも多いです。(pは圧力のこと)
理想気体のとき
理想気体のときはさらに便利です。
理想気体の状態方程式は、
\(pV = nRT\)
ですよね。
この式ををエンタルピーの定義式\(\Large{H = U + pV}\)に代入すると、
\(\Large{H = U + nRT}\)
となります。
内部エネルギーUは温度の関数ですよね。
したがって理想気体においては、エンタルピーHは、Pに無関係に決まります!
温度Tのみでエンタルピーを決定できるのはかなり便利ですよね。
エンタルピーと内部エネルギーの差について
最後にエンタルピーと内部エネルギーの差を取り上げて終わりたいと思います。
\( H = U + pV \) の式の「pV」の部分に注目してください。
ここから、エンタルピーは内部エネルギーより「pV」の分だけ大きいことが分かります。
固体や液体の時は「pV」の分の差はあまり気にしなくていいですが、気体になると温度による体積の増減がもろに影響を及ぼします。
例として100℃,1013hPa, 1mol の水を取り上げると、
液体の時→ \( pV(l) =1013 x 102 x 0.018 x 10^{-3} = 1.8 (J/mol)\)
気体の時→ \( pV(g) =1013 x 102 x 22.4 x 10^{-3} x (373/273) = 3100 (J/mol) \)
となります。
かなり変わってきますよね!
まとめ
エンタルピーとは、定圧条件下での熱の出入を考えやすい状態量のこと。
気体では、固体や液体に比べ体積が大きいため内部エネルギーとエンタルピーの差は大きい!
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