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【大学物理化学】熱力学のエントロピーを分かりやすく解説

大学の熱力学の授業で登場するエントロピー。初見では戸惑ってしまうことも多いはずです。

この記事では、そんなエントロピーについて解説していきます!

目次

エントロピーとは?

直観的には

直観的な説明として、エントロピーとは、「乱雑さの度合い」であるという表現が用いられます。

例えば、整理整頓された状態よりも散らかっている状態の方が乱雑さが大きいですよね?ということは散らかっていた方がエントロピーが大きいのです。

自然界はエントロピーが大きくなるほうが好きなので、何もしないでいると、整理されていたものはぐちゃぐちゃに、まとまってたものはバラバラになっていきます。

定期的に部屋を片付けないと散らかるのも自然界の法則に従っているわけですね笑

数式的には

エントロピー(S)の定義式は以下のようになります。

\(\Large{dS = \frac{δQ}{T}}\)

あるいは下の式でも書けて、こっちのほうを覚えた方がいいかもしれないです。

状態Aから状態Bに変化する場合のエントロピー変化は、

\(\Delta S = S_B – S_A =\displaystyle \int_{A}^{B} \frac{\delta Q}{T}\)

ここでQは熱量、Tは温度です。

Sそのものではなくて、dSが定義に用いられているのがポイントですね。

どっちも同じやないかいって思う人は素晴らしいです!僕は最初分かりませんでした笑。

エントロピーの発見

この章は飛ばしても大丈夫です!

もともとエントロピーはカルノーサイクルを考える過程で生まれました。

 

ある状態(Aとします)から違う状態(Cとします)になるとき、

A→(等温過程)→B→(断熱過程)→C

A→(断熱過程)→D→(等温過程)→C

この二つの経路のうち、どちらの経路を選んでも\(\large{\frac{Q}{T}}が変わらないということが計算で分かるので、これが状態量(ある状態を決まれば、値が一つに決まる量)であることが分かります。

よってこれをエントロピーと呼び、\(dS = \frac{δQ}{T}\)と定義しました。

エントロピー増大の法則

概要

「熱力学第二法則」っていうのを高校で習ったと思います。

あれをカッコよく言ったものが「エントロピー増大の法則」です。

そもそも熱力学第二法則は

「高温のものと低温のものがあると、高温のものから低温のものに向かって熱が移動する」

というものでした。

これを言い換えたものが、

「エントロピーは不可逆変化によって増大する」というエントロピー増大の法則です。

写真はあったかいお湯です。寒いときに飲むとポカポカしますね。

当然このお湯を室内に放置してしまえば冷めてしまうわけですが、これがエントロピー増大です。

結構簡単じゃないですか?

不可逆変化が起こったら、「エントロピーが増大したんだな」って思ってもらえれば大丈夫です。

例えば「覆水盆に返らず」っていうのもエントロピー増大の法則を表しています。

実際に式で確認してみる

興味があれば見てください。結構数式だらけになってます。

定温・定圧・定容の3つの場合に分けて確認していきます。

定温不可逆変化(拡散)

理想気体\(n mol\)が、一定温度Tで\(A(V_1 , p_1)→B(V_2, p_2)\)のように不可逆的に変化した場合を考えます。

イメージはこんな感じ

最初に定義した、

\(\Large{dS = \frac{δQ}{T}}\)

の式から、

\(\Large{\Delta S = \displaystyle \int_{A}^{B} \frac{\delta Q}{T} = \frac{Q}{T}}\)

となり、また、

\begin{align}Q &= -W = \displaystyle \int_{V_1}^{V_2} pdV &= \displaystyle \int_{V_1}^{V_2} \frac{nRT}{V} dV &= nRT &= nRT ln(\frac{V_1}{V_2})\end{align}

だから、

\( \Delta S = \frac{Q}{T} = \frac{nRT ln \frac{V_2}{V_1} }{T}= nR ln \frac{V_2}{V_1}\)

となります。

拡散しているということで\(V_1<V_2\)が成り立つので、エントロピーは増大していますね!

定圧変化

圧力一定の条件下で、n molの物質が\(T_1からT_2\)へ温度変化したときのエントロピー変化を求めます。

\(\delta Q_p = dH = n C_p,m dT\)

\( \frac{d lnT}{T}v = \frac{1}{T}\)

なので、

\(dS = frac{\delta Q_p}{T} = n C_p,m \frac{dT}{T} = n C_p,m d lnT\)

である\(dS\)が一定が\(T_1→T_2\)で一定だと考えれば、

\(\Delta S = \displaystyle \int_{T_1}^{T_2} \frac{\delta Q_p}{T} = \displaystyle \int_{T_1}^{T_2} n C_p,_m d lnT = n C_p,_m \ln\frac{T_2}{T_1}\)

定容変化(定積変化)

定容変化は定圧変化のときとほとんど同じ計算です。

\(dS = frac{\delta Q_v}{T} = n C_v,m \frac{dT}{T} = n C_v,m d \ln T\)

である\(dS\)が一定が\(T_1→T_2\)で一定だと考えれば、

\(\Delta S= \displaystyle \int_{T_1}^{T_2} \frac{\delta Q_v}{T}= \displaystyle \int_{T_1}^{T_2} n C_v,_m d \ln T = n C_v,_m \ln \frac{T_2}{T_1}\)

です。

その他の例

相転移によるエントロピー変化

相転移によるエントロピー変化は、相転移エンタルピーを相転移温度で割ったものになります。

ちなみに「tr」はtransformation(相転移)の略です。

\(\Delta S_tr = \frac{H_tr}{T_tr}\)

温度上昇に伴う相転移は\(\Delta S_tr > 0\)になります。

混合によるエントロピー変化

これもエントロピーは増大します。明らかに乱雑さは増えてますよね!

確認問題

問題1

\(273K の等温条件下で、2 molの気体を 10 dm^3から 100 dm^3\)まで膨張させた。この場合のエントロピー変化を求めよ。
必要ならば、R=8.314 J/mol K, ln 2=0.69, ln 3= 1.10, ln 5 = 1.61 を利用せよ。

答え

\(\Delta S = nR \ln \frac{100}{10} = 2 × 8.31 × \ln 10 = 2 × 8.31 × (\ln 2 + \ln 5) = 38.2J/K\)

問題2

一定圧力下で3molの気体の温度を200Kから400Kまで上昇させる。この場合のエントロピー変化を有効数字2桁で求めよ。

ただし、この時、\(C_p,_m = 20.8 J/ mol K \)とする。

答え

\( \Delta S = n C_p,_m = \ln \frac{400}{200} = 3×20.8×\ln 2 = 43J/K\)

問題3

ある物質の127℃における蒸発エンタルピーは40kJ/molである。この物質の液体から気体への相転移に伴うエントロピー変化を有効数字3桁で求めよ。

答え

\(\Delta S = \frac{\Delta H}{T} = \frac{40×10^3}{400} = 100 J/K\)

℃をKに直さないといけないことに注意!!!

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