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化学的擬態~なぜミツバチは花の受粉を手伝うのか?~

今回のは化学の雑学的な話です。

あなたは”化学擬態”という言葉を聞いたことがありますか?

化学擬態とは、ある生物が自分にとっては嬉しいが、他の生物にとっては全然意味のない行動を他の生物に取らせるために、化学物質を使うことです。

そんな化学擬態を使う面白い生態をもった生物を、今回は2種類紹介します!

目次

その1 ハチに色仕掛けをかける花

まず初めに、”娼婦のラン”とも呼ばれるある(植物の)ランについて紹介したいと思います。

自然界は「騙し騙され」の世界です。そんな自然界には、“色仕掛け”で生き残ってきた花がいることを知っていますか?

 地中海に浮かぶサルデーニャ島に生息するこのランは、花蜜や花粉といったご褒美を与えるのではなく、オスのハチに交尾の可能性をちらつかせておびき寄せ、その期待を利用することで花粉を別の花へと運ばせます。

性的策略を成功させるために、外見が雌のハチそっくりになっていることはもちろんですが、なんとメスが分泌するフェロモンとほぼ同じ化学物質を、この花は出しているんです!!!

フェロモンの組成は直鎖アルカンのトリコサン(\(\ce{C_23H_48}\)), ペンタコサン(\(\ce{C_25H_52}\)), ヘプタコサン(\(\ce{C_27H_56}\))が3:3:1の様になっているのですが、これとほぼ同じものを出しているわけですね。

いやすごくないですか!?自然界恐るべし…

色仕掛けのシナリオ

 こうした策略がうまくいく場合は、次のようなシナリオとなります。

STEP
メスだと思って、オスのハチが花の弁に舞い降り、“メスもどき”と交尾しようとする。
STEP
その実りなき努力の過程で、オスのハチが知らず知らず受粉を手伝う。
STEP
交尾をしようと躍起になっていたオスも、やがて、花に一杯食わされていたことに気づいて、花をあとにする。
STEP
だが、本物のメスを探して飛び立つオスの背中には、花粉塊がしっかりと付着したままで、離れた場所に咲く違う花まで運んでいく

書いてて泣けてくる(涙)。オスのハチにとってはたまったもんじゃないですよね…

しかし幸運なことに、一度騙されたオスは、より”本物らしい”メスを探すようになるそうです。良かった。

その2~蟻を騙すカエル~

アリさんを騙すカエル

 次に、西アフリカのサバンナに住むウエストアフリカン・サバンナ・フロッグ(英名:West African savanna frog、学名:Phrynomantis microps)を紹介したいと思います。

 このカエルは一日の大半を地下の穴に隠れて過ごします。しかし、その穴が通常では考えられない穴なんです!

 というのも、このカエルは、非常にどう猛な種であるアフリカン・スティンク・アント(英名:African stink ant、学名Paltothyreus tarsatus)の地下の巣でしばしば入って暮らしてるのですが、このアリは通常侵入者を見つけると、強力なあごと毒針で侵入者に襲いかかります。

 しかし、彼らはウエストアフリカン・サバンナ・フロッグが自分たちの巣の中でくつろいでいても全然気にしません。

 このカエルは一体どうやってアリをだまし、攻撃されずにいるんでしょうか?さっきの例を見た後なら何となく予想はつくかもしれないですね。

秘密は皮膚に

 ベナンで活動しているドイツとスイスの研究者が、その秘密を明らかにしてくれました!

  研究チームはカエルが皮膚に秘密があるのではと考え、このカエルの皮膚の分泌物を塗った虫を先ほどの蟻の群れに入れました。通常なら、アリは即座に噛みつく、刺す、など攻撃を始めますが、この時、分泌物を塗られた昆虫に対し、アリは30秒から数分、攻撃しなかったんです。

 化学的分析により、研究チームはカエルの皮膚に存在する活性成分を特定した。ペプチドと呼ばれる二つの化合物で、小さなタンパク質のようなものだ。「アリのように見えるなら」たぶんアリなのだろう、自分たちの仲間だと認識させているらしい。

 アリは触角を使い、害をなす可能性のある侵入者と、同じ巣の仲間を識別している。触角は化学センサーとして作用する、非常に敏感な探知機です。その精度をかいくぐれる化学物質ってすごくないですか?

「アリのように見えるなら」たぶんアリなのだろう、と判断しているんでしょうね。

 

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