変分法は、摂動論と並ぶ、厳密に解けない波動関数を近似的に解く方法の一つです。
摂動論を使う方法については下の記事で解説しています。
早速ですが、実際に問題を解いていきます!
問題
波動関数の単純で特別な場合として、試行関数\(\large{\phi = c_1 \phi_1 + c_2 \phi_2}\)を仮定する。
ただし、 Hはエルミート演算子であるため、
\(\Large{H_{ij} = \displaystyle \phi_i ^* H \phi_j d \tau = H^*_{ji}}\)
\(\Large{S_{ij} = \displaystyle \phi_i ^* \phi_j d \tau = S^*_{ji}}\)
である。
行列の要素が以下
\(\Large{H_{11} = -14eV, H_{22} = -6eV, H_{12} = H_{21} = -3eV}\)
\(\Large{S_{11} = S_{22} = 1 , S_{12} = S_{21} = 0}\)
のとき、
変分法を用いて、基底状態のエネルギーと、対応する波動関数を求めよ。
解答
①エネルギーを導出
まず、エネルギーを導出します。
問題文の条件より、今回の永年行列式は、
\(\Large{\left|\array{H_{11}-ES_{11}&H_{12}-ES_{12}\\ H_{21}-ES_{21}&H_{22}-ES_{22}}\right|}\)
\(\Large{=\left|\array{-14-3E&-3\\-3&-6-E}\right| =0}\)
つまり、
\(\Large{ (-14-3E)(-6-E)-(-3)(-3) = 0}\)
\(\Large{E^2 + 20E +75 = 0}\)
\(\Large{(E+5)(E+15) =0}\)
\(\Large{E = -5, -15}\)
基底状態のエネルギーはこの二つのうち低いほうなので、
E = -15eV が、基底状態のエネルギー。
ちなみにE = -5ev のほうは、第一励起状態のエネルギーです!
②対応する波動関数を導出
先ほど、下のような永年行列式を考えましたよね。
じつはこれは、
\(\Large{c_1(H_{11}-ES_{11}) + c_2(H_{12}-ES_{12}) = 0}\)
\(\Large{c_1(H_{21}-ES_{21}) + c_2(H_{22}-ES_{22}) = 0}\)
という\(c_1\)と\(c_2\)の連立一次代数方程式から導かれたものなんです!
具体的には、上の連立一次代数方程式は行列の方程式の形で書けて、
\(\Large{\pmatrix{ H_{11}-ES_{11}&H_{12}-ES_{12} \\ H_{21}-ES_{21}&H_{22}-ES_{22} } \pmatrix{ c_1 \\ c_2 } = \pmatrix{ 0 \\ 0}}\)
のように書くことが出来ます!
これが、「c1=c2=0」以外の解を持つ条件が永年行列式を生み出していたわけです。
というわけで、元の式
\(\Large{c_1(H_{11}-ES_{11}) + c_2(H_{12}-ES_{12}) = 0}\)
\(\Large{c_1(H_{21}-ES_{21}) + c_2(H_{22}-ES_{22}) = 0}\)
に\(E = -15\)を代入して、\(H_{11}\)などの値も代入すると、
\(\Large{c_1(14-E) + c_2(-3) = 0}\)
\(\Large{c_1(-3) + c_2(-6-E) = 0}\)
これを解いて、
\(\Large{c_1 = \frac{1}{3}c_2}\)
ここで、φの規格化条件、すなわち、
\(\large{\displaystyle \phi^* \phi d \tau = 1}\)
より、
\(\Large{ |c_1|^2 + |c_2|^2 = 1 }\)
これを解いて、
\(\Large{c_1 = \frac{3}{\sqrt{10}} , c_2 = \frac{1}{\sqrt{10}}}\)
ゆえに、基底状態のエネルギーに対応する波動関数は、
\(\Large{ \phi_{基底} = \frac{3}{\sqrt{10}}\phi_1 + \frac{1}{\sqrt{10}}\phi_2}\)
これで対応する波動関数も求めることが出来ました!!
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